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武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ 東京都港区赤坂9丁目7番1号ミッドタウンタワー5階 〒107-6205 Musashino Art University Design Lounge 5F Midtown Tower 9-7-1 Akasaka Minato-ku, Tokyo 107-6205 Japan telephone : +81-3-3470-7221 / facsimile : +81-3-3470-7225

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【magazine】スペシャルインタビュー2020 第五回「デザイン・ラウンジとこれからの集まる場」

武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ (以下、デザイン・ラウンジ) は、2020年12月に東京ミッドタウン・デザインハブ内の拠点を閉室し、その機能を市ヶ谷キャンパスへ移行する。この機に、これまでデザイン・ラウンジにご関係頂いた学内外の方からお話を伺いながら、これまでの研究・活動を振り返り検証を行う、デザイン・ラウンジ オンライン企画「スペシャルインタビュー2020」の第5弾。

今回は、デザイン・ラウンジの開室一年目より長く開催した勉強会「折詰め会」の発起人及びコアメンバーの皆様より、この勉強会が生まれた経緯を伺いながら、変化し続けるコミュニティ、これからの人が集まる場の意味を考える。

 

■2012年、デザイン・ラウンジ開室一年目から続く勉強会「折詰め会」とは

 

ーーー「折詰め会」とは、インハウスデザイナー・エンジニアなど専門性を持つ人が集い「何か面白いこと」を探索し合う、勉強会です。折詰め会を企画したきっかけを教えてください。

 

松林(発起人): 2012年、私は美術大学を卒業してインハウスデザイナーとして働いていたのですが、佐久間さん(発起人)と二人で、ずっとこのままこの会社の中で、デザイナーとして働いていて良いのだろうか?みたいな問題意識がありました。

そんな中、デザイン・ラウンジでの公開講座に参加したときに、その場にいた井口先生 (元デザイン・ラウンジ ディレクター)に相談したのが始まりでした。

 

佐久間(発起人) :山下亮氏 (元デザイン・ラウンジ アシスタントディレクター)と一緒に何ができるのかを考えて、勉強会という形になっていきました。最初の頃はなかなか人が来ない時期もありましたがWEBサイトでの告知だけではなく、仕事や生活の中で出会う人たちに折詰め会のことを紹介するとたまに来てくれたりして、ちょっとずつ参加者の輪が広がっていきました。

 

《折詰め会 拡大版 -デザイン学科で学んだことは何?-》(2013年)

 

―――折詰め会が始まってから9年が経ちますが、最初の頃と比べてインハウスデザイナーの取り巻く環境に変化はありましたか?

 

佐久間: 環境自体は、変わってきたと思います。私の会社で言えば、会社が経営陣を含めてデザインに注目し、デザインに対する評価が変わってきました。ただ、今の状況であれば折詰め会がなくても良かったかと言うとそうではなくて、「新しいことを学ぶ場」や「色々な人に出会う場」がもっと必要だと感じる点は、まだ変わっていない印象です。インハウスデザイナー特有の根っこにある課題かもしれません。

 

松林: そうですね。私のまわりの環境で言えば、以前は「会社の中でデザイナーをしている」という認識が自分の中であった一方、現在は「会社で」というより「自分がデザイナーとして生きていく」ということ考え方にシフトしてきました。

 

―――現在の折詰め会コアメンバーである川合さん、日置さんにお伺いします。
お二人が最初に参加されたのは2013年の「折詰め会 拡大版(デザイン・ラウンジの秋イベントとして実施した回)」でしたが、そのときの印象はどうでしたか?

 

川合(コアメンバー): デザイン・ラウンジのようなデザイン系のスペースで対話したり、知らない人とディープな議論をする機会があまりなかったので、新鮮でした。それと、僕も初めて折詰め会に参加した頃はインハウスデザイナーだったので、佐久間さんと松林さんの課題意識を痛切に感じていて。そこがうまくはまったのかなと思います。

 

日置(コアメンバー): 同じくですね。その頃、私はSI(システムインテグレーター)をしていたんですが、ずっとこのままシステムを作っていていいのか?という問いがある中で、過ごしていました。デザインを学びたいと思って色々な勉強会を探していたときに、ちょうど見つけたのが参加のきっかけです。開催日は、東京ミッドタウン館内で「グッドデザイン賞受賞展」が開催中でしたが、デザイン・ラウンジの部屋には入りやすかったし、すごいアットホームな感じの会だな..という印象を受けました。

 

松林: 拡大版、懐かしいです。あのイベントから毎回参加されるようになったメンバーが結構いるので、開催してよかったです。

 

《折詰め会 拡大版》(2015年)

 

―――9年間開催してきた中で、印象に残っている参加者やテーマはありますか?

 

川合: エンジニアの方に機械学習について語ってもらう回や、電波を使うスタートアップの方に技術を紹介してもらいながら活用方法を考える回など、色々ありましたね。自分の疎いエンジニアリングの技術面を教えてもらったり、形になってきた技術をこれから社会でどう活用するといいのか、議論できたのは楽しかったです。

 

佐久間: 折詰め会として、東京ミッドタウンアワードというアート・デザインコンペに応募したいという参加者がいたので、みんなで応募作品を作ってエントリーしたこともありました。

 

日置: ゲーム制作系の学生向けワークショップを企画していたメンバーが、折詰め会で企画内容を相談・ブラッシュアップをして、実際にデザイン・ラウンジを使って、ワークショップを開催した事例もありました。みんな、自分の関心事をテーマにして議論していましたが、本業でやりたいことを取り扱っていました。

 

———振り返ってみると、色々なテーマが議論されましたね。
折詰め会で実験したプロジェクトが、その後どうなったか聞いてみるのも面白そうです。

 


《第59回 折詰め会 このロボットを使ったサービスを考えよう》 (2017年)

 

変化し続けるコミュニティ、集まる場について

 

―――折詰め会は、メンバーが少しずつ入れ替わったりオンライン開催をするなど、その時々の状況に合わせて変化しながら継続していますが、これからのコミュニティの変化や集まる場について、どう思いますか?

 

川合: 「場」が持つ力というのは、やはり強いですよね。これからは、「場」が持つ力を借りたり、場に後押しされるのを期待するのが難しくなってきそうなので、今まで以上に個人で頑張らないといけなくなりそうだなと思います。
たとえば美術大学などでは、「場」から受ける刺激で自然と自分の殻が一皮剥けていくような成長があると思いますが、リモートだと場や人との交流で一皮剥けることも減るので、自分でどう変わるのか、あるいは変わらないままマイペース路線であるがままのスキルを磨いていくのか?みたいなプロフェッショナルを目指す学生にとってかなり大変な状況だと思います。

 

佐久間: 考え方が古いかもしれませんが、やっぱり「同じ場にいること」で生まれてくるアイデアや議論があるなと、改めて感じます。折詰め会で毎回、お菓子とペットボトルの飲み物を用意して、一緒に食べながら話したのは、すごく貴重なことでした。

 

《第95回 折詰め会 ~100回目に向けて何をしていきたいか~》(2020年)

 

———折詰め会は、デザイン・ラウンジ閉室予定の2020年の12月の節目の回で、ちょうど100回目を迎えます。
このコミュニティが長く継続したことについて、どう思いますか?

 

松林: まさか9年間も続く勉強会になるとは、思っていませんでした。私の家庭環境も変わり、自分だけでは続けることができなかったですし、運営を担ってくれたメンバーの皆さんに感謝しています。初期の頃に、「失敗してもいい場にしよう」と話していたので、それが9年間変わることなく受け継がれていたのは良かったです。

また、折詰め会というネーミングの「折詰め(折り箱に食べものを詰めたもの)」の部分にあるように、この勉強会に参加したら、自分たちで何かを包んで持って帰ってもらうことを大切にしていました。一方通行で情報を与えられるのではなくて、初めての参加者も一緒に考えて話し合う、能動的な場にしたかったんです。

 

川合: 折詰め会の場合は、自分たちの迷っていることや悩んでいることなど、まだかっこよく見せられる段階にないものを見せて、議論し合うことができる場所でした。折詰め会以外の勉強会では、少しかっこつけた見せ方をするグループが多くある一方で、色々な事物をテーマとして取り扱って、実験ができるというのがユニークだと思っています。このような、かっこつけない場だったからこそ、9年も継続できたのかもしれません。

 

佐久間: 川合さんが言うように、折詰め会の、見た目を尖らせないことに意味を感じていました。デザインには「見た目以外の部分」にも考えるべき要素がたくさんがあるので、こういった見た目の良さ以外の、広いデザインの話ができるのが、折詰め会らしさだったのかなと思います。

 

―――たしかに、デザインをやっていない人のほうが、デザインのことを意識できるケースは結構ありますね。デザイナーが、デザイン思考にピンと来ないことが多い現象に近い気がしました。

 

《折詰め会 メインビジュアル》

 

 

市ヶ谷へ移行後のデザイン・ラウンジの機能に思うこと

 

―――2020年12月に東京ミッドタウン・デザインハブ内の拠点を閉室し、その機能を市ヶ谷キャンパスへ移行します。六本木での情報発信拠点としての期間を経て、市ヶ谷は実際に社会を学びのフィールドとして捉えるイメージですが、今後の活動についてはどうでしょうか。

 

日置: 市ヶ谷も、色んな人が集まっているので楽しい場所だと思います。街のイメージでいえば、印刷会社や大学、専門学校などがあるからか、「デザイン」というより「文化」という印象が強いですね。

 

川合: 僕も、デザインのイメージはあまり無いですね。逆に、デザインやアートとかのメスが入っていないエッセンスみたいなものを持っている人が多くいそうです。六本木とはまた違う面白い人たちに、出会えるんじゃないでしょうか。

 

佐久間: これから一層、デザイナーであるとかそうでないとかの線引きが無くなっていき、色々な肩書きを持った人が増えていくと思います。自分の好きなことや得意なことを携えた素敵な人達に出会える場になるといいと思います。

 

―――9年という長い期間に渡って折詰め会で議論した様々なプロジェクトが、これからどう社会に実装されていくのか、楽しみに思います。
みなさん、本日はありがとうございました。

 


川合 啓介(かわいけいすけ)
1989年神奈川件生まれ。2013年多摩美術大学生産デザイン学科卒業後、情報通信機器メーカーのインハウスデザイナーを経て、デザインコンサルティングファームにて事業開発をデザインの力でサポート

 


佐久間奈々恵(さくまななえ)
1987年三重県生まれ。2010年多摩美術大学情報デザイン学科卒業。富士フイルム株式会社にてデジタルカメラのユーザーインターフェースデザイン開発に携わっている。

 


日置浩司(ひおきこうじ) フロントエンドエンジニア
1989年生まれ。現在、面白法人カヤックにてWEBやスマホアプリの開発を担当 Twitter: @hiokky_k

 


松林景子(まつばやしけいこ)
1988年千葉県市川市生まれ。2010年多摩美術大学情報デザイン学科卒業後、富士ゼロックス(株)にて、行政や金融向け帳票管理システムなどのUIデザインを担当。2児の母。

 

(文=武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ)

 

 

 

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