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美大ラウンジ(裏)

美大、デザインラウンジの「裏」の話を、手羽イチロウとその仲間がお伝えするブログです。

2015年02月3日

手羽ちゃんの美大受験アドバイスその4-実技試験編

昨日は入試業務が休みだったから

東京都庁に行ってきた手羽です。


運転免許更新に。
都庁に行くのはこれで2回目。
だって免許更新は今まで府中試験場でしかできなかったから(理由は聞かないでください涙)

しかし、さすが都庁だけあって設置されてる作品

どれも力強い作品ばかりですね。
って、名前見たら有名な方達だった・・・そりゃそうだよな・・。

 

入試アドバイスシリーズをやっております。
これまではこちら。
手羽ちゃんの美大受験アドバイスその1-導入編
手羽ちゃんの美大受験アドバイスその2-交通編
手羽ちゃんの美大受験アドバイスその3-会場編

5日は雪予報がでてますね・・・。

今日からムサビは実技試験が始まるので、実技試験のアドバイスを。
なんといってもこれです。

問題文をちゃんと読もう。

人によっては「え?実技で『問題文をちゃんと読もう』?!」と感じるかもしれません。
でもこれをバカにする人は、なーーんにもわかってない人ってことですよ。
おっと、アドバイスをする前にこの単語の説明を先にしておかないと。

モチーフ」という言葉がありますが、美術用語としての「モチーフ」は主に2つの意味がありまして。

1つ目は「絵や彫刻で再現される対象」。
難しい表現をしましたが、ドラマ等の美術教室のシーンで台の上にリンゴやら布やらフランスパンやらガラス瓶などが置かれているのを見たことがあると思いますが、それです。
厳密にはイコールではありませんが、他の日本語だと「対象」「静物」が一番近いかも。
例えば、
入学試験ガイド2015 | 武蔵野美術大学 |工芸工業デザイン学科
がそうですね。
問題文には

机上のモチーフをデッサンしなさい」

とだけ書かれてて、「いかに対象の特徴を捉えているか?忠実に形や質感や量感等を再現し、構図が優れているか?」「描写力」が問われています。
多くの方になじみのある「モチーフ」はこっちの意味じゃないかと。
だいたいの場合は、布・ガラス・鉄・植物など異なる質感・形態のものをモチーフにし、それらを布は布らしく、ガラス瓶はガラス瓶らしく「描き分け」できるか?画面にちゃんと「納めているか」を見る試験。
多くはデッサン試験の場合の「モチーフ」。
あ、ちなみに昔は石膏像をよく描かせたもんですが、今出題されることはないですね。

2つ目は、「題材や動機」という意味。
違う単語だと「テーマ」「イメージ」「想定」が近いかな?
典型例が去年の視デのデザイン試験です。
入学試験ガイド2015 | 武蔵野美術大学 |視覚伝達デザイン学科

「与えられたモチーフ(電球とステンレス板)を自由に構成し、観察し、の2つの関係によって生まれる光のイメージを色彩構成しなさい

となっています。
「モチーフ」から受ける「イメージ」を描くように指示しています。
つまり、観察能力も問われつつ、発想力も見られてる、と。
出題意図と意図のポイントにはこう書かれてて。

問題文には最終的に「光」を表現することを求めています。「光」という言葉から概念的、関連的な表現に向かう前に率直な現象の観察から得た自分なりの発見がまず求められ、その上でそれらの素材をどのように解釈・構成し統合的な視覚表現に結びつけるかを見る試験です。

「そのままを描け」というより「現象を自分なりの解釈をし、それを書きなさい」ってことですね。
多くはデザイン試験での「モチーフ」で、視デはこのパターンが多いかな。
つまり、デッサンで「基礎能力」を見て、デザイン等で「発想力」を見る・・・ってのが昔は一般的でした。

 

で、ここからが本題。

でも、最近はデッサンでも発想力を見る出題が増えてます。
去年の油絵学科「デッサン」試験の問題文と「出題意図と評価のポイント」を見てください。

入学試験ガイド2015 | 武蔵野美術大学 | 油絵学科油絵専攻

問題文が

机上のモチーフを自由に描きなさい

なんです。

この「自由に」がクセモノで(笑)、出題意図を読むとやはりこの「自由に」がポイントになってるのがわかります。
出題者がはっきりと「一見ものたりなく感じるようなモチーフ」と解説してるとおり、「自由に」を読み飛ばして「机上のモチーフを描きなさい」だと信じ込んで見たままをそのまま描くと、物足りない絵になるのは当然ってわけなんですね。

日本画学科「鉛筆デッサン」もすごくいい例です。
入学試験ガイド2015 | 武蔵野美術大学 | 日本画学科
モチーフ台の上にダンボール・ガムテープなどが置いてある試験でした。
普通のデッサン試験ならこれをそのまま描く試験なんだけど、問題文にはそこには存在しない「手を加えなさい」と書いてあります。
あくまでも台の上にあるのは「素材」であって、それらにまさに「手」を加えて自由に調理しなさい、ってこと。
参考作品(受験生が試験で描いた作品)を見ても、そのままを描いた人は少ない。
問題文をちゃんと読まないと出題者の意図を読み取れないし、「手」を描いてないと課題違反になってしまう、というわけ。
問題文をちゃんと読もう」というのは、こういうことなんです。
ちなみに出題と意図には

評価のポイントとして、(中略)想像力の独自性、そしてそれらを描き切る執念を、着色写生と併せて評価した。

と書かれてます。
絵に対する執念も見られてるんですよ。
日本画らしいな、と(笑)

こういう言葉があるかわからないんですが、見たままを描くデッサン試験は「基礎デッサン」、発想を加えるデッサンは「応用デッサン」と私は勝手に呼んでます。
地方美大入試でよくある「紙コップを描きなさい」は基礎デッサンで、ムサビやタマビは応用デッサンの傾向が強いですね。

ちなみに受験生に「●●学科と●●学科の違いを教えてください」と聞かれた時に、手羽はこう答えてます。
「簡単に見分ける方法が二つあって、ひとつは入試問題を見ることだね」と。
実技試験は教員からの初めての課題です。
(その証拠に入試は大学会計上、教育経費に計上されます)
そして、「この出題をあなたはどう解釈し、表現しますか?→私たちはそういう人材が欲しい→そういう人のためのカリキュラムを用意してますよ」なメッセージでもあるわけで、実技試験から大学・学科の違いを見つけることができるんですね。
だからムサビやタマビは学科ごとに試験が違うんです。
ご参考に。

 

こんな話がありまして。

手羽がモチーフ準備担当をやってる時、実技試験出題者に「この問題文だと、こういう解釈をしちゃう受験生もいるんじゃないですか?(まずいんじゃね?)」と聞いたことがあるんです。
すると出題者があっさりとこう答えました。
それはそれでいいんじゃない?ものが良ければと。

基礎的な部分では「正解」がありますが、出題者が想定した以上のものを「しっかりと」描いていれば、ポイントが高くなることがあります。
採点が終わった後に、「手羽ちゃん、この問題文からこんなイメージを出してきた受験生がいたんだよ!すごくない!?」と興奮気味に語ってくる先生もいるくらい。
つまり、どちらにでも解釈できる問題文の場合はどちらでもいいってこと。
試験が終わった後に「こんな風に描いちゃったけどまずかったかな?」とつぶやいてる受験生がよくいますが、問題文に「これしちゃダメ」と書かれてる以外のものであれば、「モノがよければ」特に問題はないはずです。

問題文をちゃんと読もう」は省略しすぎたアドバイスでした。
問題文をちゃんと理解し、自分なりに発想を広げよう。
実技試験に答えなんてないんだから。

ただ。
問題文に書かれてる「条件」を無視した場合は、もちろん課題違反(減点対象)となります。
「3個描け」と言われてるのに5個描いちゃったり、両手を描けって言われてるのに片手だったりすれば、どんなによくても減点。
ムサビの実技で紙の利用が縦横自由だと「天地を示す矢印を書きなさい」と条件に入ってることがあります。
これも書き忘れると減点対象になる場合があるのでご注意を。

ちなみにアトリエ会場でイーゼル使って行われる実技試験での場所決めは「くじ引き」です。
予備校だと早い者勝ちかもしれないけど、試験では違うので、急いで会場に行く必要はないからね。

 

しかし、すごいと思いません?
問題文を理解し、更にそこから発想を広げ、独自性を入れ、アイデアスケッチをし、下書きをし、色を塗り、場合によっては文章もつける。
いくら美術予備校で訓練をしてるといえ、これをムサビのデザイン系試験では受験生はたった3時間でやってのけてるんです。
しかも「手羽ちゃんの美大受験アドバイスその1」でも書いた通り、人によっては長期間その状態を続けるわけで。
ムサビやタマビはAO入試ではなく一般入試で8割、9割取ってるので、裏を返すと、読解力、発想力、描写力、表現力、瞬発力、持続力、ストレス耐性、体力、自己管理能力を持ってる人がムサビやタマビには8割、9割いるってこと。
企業の方へ
ムサビやタマビには「絵が描けます」だけでなく、これらの「生きる」基礎能力を持ってる人材(つまりそういう人を対象としたカリキュラムで学んだ人)が8割、9割いますよ。
「サークルの副部長やってました」
「ボランティアやってました」
「コミュニケーション能力があります」
な人材に飽きてたら、ぜひご検討ください。

 

以上、免許更新が終わって

献血もしてきた、そんな誕生日だった手羽がお送りいたしました。

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